「泉の森」福田健太郎 写真展

山市さんが日本写真芸術専門学校に入学しようと思ったきっかけは?

FWがあるから日本写真芸術専門学校に入学しました。
大石芳野さんはご自身の著書「カメラを肩に見た世界」の中で「机上の勉強は現地では役に立たない」 と話しています。この言葉にとても感銘を受け、それがずっと頭の中に残っていました。 もともと文化人類学に興味があり、様々な文化を知りたいと思っていました。
しかし日本にいては様々な文化を知ることはができません。
だから外に出たい、外が見たい、って思ったんです。
写真がきっかけで日本写真芸術専門学校を選択したわけではありません。
さまざまな国を巡り、さまざまな文化と触れ合うことができるFWがあったから、日本写真芸術専門学校に入学を決めたんです。 自分にとって写真は全てではありません。数ある表現のうちのひとつでしかないと思っています。 だからなのか、写真との距離を遠く感じています。
それが自分にとって劣等感であり、写真を勉強することでより距離を感じるようになってしまっています。
よく、情愛を写真にこめることがうまい方がいますが、自分は苦手でうまく表現することができません。
写真だからできることはとても多いと思います。写真には可能性を感じています。
偶然写ってしまったものや予期せぬできごとが起きるから写真は楽しいですよね。

フィールドワークの良い点は?

世界に行けることですね。自分の世界観や認識が狭いことをリアルに感じることができます。自分も気付かされました。
FWは行きと帰りに大阪で集合写真を撮影します。
その集合写真を見ると行きと帰りの表情が全く違うんですよ。
写真を見ただけで様々な経験を積んできたことが本当によくわかります。

大学で経営を学ばれていましたが、現在は大学院ですよね?大学院ではどのようなことを学ばれていますか?

今は経営の最先端の理論について学んでいます。
どれほど確からしいのか、どれほど確からしくないのか、などを議論していますよ。
リーマンショックやバブル崩壊など、現状から新しい理論を探し出しています。
芸術って数学に似ていますよね?どちらも答え(モチーフ)があって、そこに向かっていく方法を試行錯誤していくところなど、すごく数学と似ていると思います。

前回の取材で最終ゴールは「写真」とお話していましたが、変化はありましたか?

最近よくわからなくなってきました。
写真は楽しい。作りたいと思います。写真と向き合いたいとも思います。
最近は写真を「撮ること」「発表すること」という考えから、「写真史、思想、概念」という方向に広がってきました。
つまり、機材やプリンターはメーカーが考えて良いものを提供してくれますよね。
そこ以外の「写真を取り扱う世界」に関わっていきたいんです。
自分の思想はロランバルドの「明るい部屋」やジェフリーバッチェン、伊藤俊治の本などが影響していると思います。単純に撮るだけで終わりたくない、写真とは必ず関わっていきたいと思っています。

この作品はいつ頃から?なぜこのテーマに?

2008年からですかね。FW時代の作品ともつながっているので、それも含めると2006年から撮影していることになります。
一回に一ヶ月程度の期間で数カ国、3回にわたり撮影してきました。
ベトナムのホーチミンやマレーシアのクアラルンプール、実際に現地に行ってみるとどちらの国も 街並みがとてもキレイでですよね。
現地にいるとそれぞれ違う場所にいることはわかるじゃないですか?
それってなぜ違う場所にいることがわかるのでしょうか?
その一番の違いは『人』ではないか?って思ったんです。
これまでの作品では人を撮影してきていません。
カザフスタンの撮影をしているときから作品に人間をいれるようにしてきました。
「ONENESS」とは単一性、特殊性という意味をさします。
それぞれの場所の特殊性を追い求めてきた結果、このテーマとなりました。

これからの活動について教えて下さい。

このテーマについてはひと区切りをつけようと思っています。
情感を表現することが苦手なので、もっと自分を表現できるような作品を撮影していきたいですね。
作品に被写体は写っていますが、自分が写っていないとお世話になった先生によく言われます。
これからのテーマは自分。情感を写したいので、あえてテーマから入らないようにしたいと思っています。

作品を通して皆さんに伝えたいことはありますか?

是非作品を見てください!文章を読まずに作品を感じてほしいと思います。
率直な意見を聞かせて下さい。様々な方の意見を真摯に受け止めてこれからも作品制作に励みたいと思っています。 山市さんのホームページはこちら

富士フィルムフォトサロン東京

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