そして僕は小旅行をする
毎日の登校を、「まるで小旅行だね」と言った人がいる。それも一人や二人じゃなく、何人もの人からいわれる。僕が住んでいる町は栃木県の南端にある、小山という町で、そこは地方都市の端くれで、本当に田舎臭いといったら、失礼なのだろうけれど、僕はそんな町がすごく好きで、最初は都内で暮らしたい、と切に思っても、結局三年間(実質二年半だけど)小山から渋谷までの約100km近くを通い続けてしまった。
電車は走る。光が溢れる時間帯なら、代わる代わる流れて行く風景がその辺り一帯の町を感じさせて、それは小山の町とどことなく似ている。でも確実に町ごとにその空気は違うはずで、それでも同じように感じてしまうのはたぶん、僕がとらえる部分とその空気の部分はつながっていないからだと思う。結果論的に言ってしまえば、そういう差異や共通点すべてひっくるめて、田舎の地方都市という雰囲気があか抜けなくて、すごく好きだ。
でもそれは赤羽と川口の間を流れる荒川を超えた途端にがらりと雰囲気を変える。「町」とは作られたものなのだろうけれど、それ以上に造られた街というイメージがふつふつとわいてくる。そして赤羽を過ぎて池袋あたりに来てしまうと、もう「町」とも「街」とも呼べない風景になってきて、そこに人間が住んでいることが不思議に感じてしまう時さえある。
僕は人の住んでいる、という気配を感じていたいのかもしれない。
アジアの町を歩いていた時は、どんな都市部だろうと、人の生活、という気配がいたるところに染み付いていて、それで都市のど真ん中に身を置いても不安になんてならなかった。でも、東京の街に立ってみると、それとは真逆なことを様々な面で突きつけられる。
そして僕は、毎日、その不安と安堵を、繰り返すために、小旅行をする。
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