帰宅時間
用が無い限り早い時間に渋谷を出て地元へ帰っていくのが最近ふと恐くなる。それというのも自分に思いっきり自信が無いからで、それを埋め合わせるだけの積み重ねみたいな作業をしたいと思って、結局帰る時間は遅くなる。これでいいんだろうか、とか、こんな早くに帰っちゃって平気かな、とかそんなことを思いながら帰るよりも、今日はやるだけやったし疲れた、という気分で帰る方が恐くないというのはただの逃げであって、それじゃあんまり好循環しないような気がしていたけれど、それも今日くらいでやめにしようと思う。そろそろ自分が抱えてきたものを並べなおして、見てみて、秤にかける頃なんじゃないかと。そう思えば、次のことに駆け出していけるような気がして。
だから今日の帰り道、なんとなく見ていた風景が違って見えて、でも写真に写そうとすると、それはいつもの風景に戻っていく。そんなジレンマみたいなものを感じたけれど、見慣れた風景というのはつまり「僕」にとって見慣れたものであって、「他者」にとってはもしかしたら見慣れない目新しい風景なんじゃないかと思った。そうならば僕が見飽きた見飽きたと感じていたものも、反対の立場に立っている人から見れば物珍しかったり素敵なイメージで描かれた、大切な風景の一つになっているんじゃないかと、そんなことを、渋谷の並木橋を渡りながら、夜、雲がかかる空を見上げて思った。東京の夜の空は光が氾濫していて、雲が明るく、しらけて見える。これが地元に帰るとすーっと落ち着いたように濃紺に染まっていくのはやっぱり光の差で、今日会ったいろんな友達とか先生はまた帰るところが違うから、それぞれの雲の色を夜空に眺めるんだなと思った。
今日は帰宅すると、まだ祖父が起きていた。でもちょうど床に着くところだったらしく、「おやすみ」と言って寝てしまった。
早く帰ってくる意味はちゃんとあるのに、と思いながら、今日も缶ビールを一本、空ける。
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